2016年4月2日土曜日

サンローラン考察2



 元々、ファッションに興味があるので、サンローラン氏の写真は雑誌とかっで何度も見たことがあったけど、いつも現実味のない不思議な人って思ってた。

 他の偉大なデザイナーのシャネルさんやムッシュ・ディオールは写真でみても、きちんと現実に存在してた人だと思えたけど、サンローラン氏だけは違った。写真に写ってるのに、確かに存在してるはずなのに、存在してる感じが伝わってこなかった。

今回、この映画を見て、その理由が分かったと思った。


 サンローラン氏はアルジェリア紛争で徴兵されたけど、
ストレスを被ってフランスの精神病院施設に収容された。
そして神経衰弱のために、
電気ショック療法を含む精神医学的な治療を受けた。

その時、体重が35kgになるまで弱ってたってなってマジ衝撃だった。
そのあと、恋人のベルジェさんの協力で、独立してメゾンを設立してって
回想しながら電話インタビューを受けるとこから話がスタートしていく。

精神病院で地獄を見て、それ以降は肉体はそこに確かに存在しているけど、精神はもう同じ世界には存在してないんだろうと思わされた。
そこで、もう”普通”ではなくなったんだと思う。

あの、ムジークって名付けられた犬だけが、
現実の世界と彼が本当の意味でいる場所とを結びつける
唯一の存在なんだなぁと思った。

だから、犬が死ぬ度に同じ犬種の犬を
また飼うっていう事になっていたんだと。
しかし、尊敬するマークジェイコブス氏も犬飼ってるし、
薬物依存のリハビリも受けてたはずだし、
なんかすごいデザイナーほどそんな感じで、そーゆーのを求めるのかな。
まぁ、全ての人がそうだとはもちろん思わないけどさ。

 デザイナーとして更なる飛躍を遂げたのは、あの紛争での出来事の後で、
才能は大きく開花して更なる名声を高めたけど、
精神を病んでしまうという代償を払って得たものがあまりに大きすぎて、
だからそれを維持するために、更に代償を払い続けるという作業を
しないといけなくて。

でも、それは、きっと誰にも分かってもらえない孤独なつらい作業で、
だからこそ、逃避のためにクラブで毎晩豪遊して酒や薬に溺れて、
女も男も愛するという万能型になってしまったのかなぁと思った。

結局、男同士でセックスして、それに溺れても、
それから得られるものが忘れられなくて辛くなっても、
服をデザインすることは放棄せずに向かい合っていたんだから、
結局彼は本当にデザイナーだったんだと思う。
偉大な人間のその功績の裏側に潜む、表に出てはいけない事実や、
葛藤や苦悩が美しく、そして敬意を払って描かれていたと思う。

映画の中で、印象的だったサンローラン氏のコメント。

・「ファッションは短命だけど、スタイルは残る」
 女性が皆持っている内面の美しさを引き出すという事にサンローラン氏はすごく優れていたと思うし、私自身も、自分なりにおしゃれを楽しみたいと考えている人間で、いつも流行よりも自分がどんな恰好をしたいのかって事を考えて服を決めるし、買ったりするから共感した。

・「半年間何もしなければ、10年遅れをとる」
 これはもう、ファッションに限らず全ての事に言える事だと思う。
 だから、やっぱり何かを変えたいのであれば、些細な事からでいいから、
何かしら行動をしないといけないと思った。





 とにかく、この映画はかなり個人的には好きでした。
元々、主演のギャスパーが大好きで、尚且つサンローラン氏に
いつも感じてた謎の正体を知りたいと思ってたので。

 で、左の画像がサンローラン氏本人で、右がギャスパーなんだけど、
ほんとに役作りって言葉で済まない位に似てると思う。

 ギャスパーのこの世のものと思えない美しさが、サンローラン氏がまとう、
いつあっち側の世界に行ってもおかしくないという危うさと
「美しき怪物」を見事に表現していたんだと納得。

DVD出たらちゃんと買います!!




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